2023年3月13日、厚生労働省との懇談を行いました。
医学連では毎年、全国の医学生から集めた意見をもとに厚労省・文科省との懇談を行い、意見交換を行っています。
詳しい要請内容や回答を知りたい方は、こちらの厚労省交渉報告もぜひご覧ください。
https://drive.google.com/file/d/1KyRKgem3o8W8696vhuRxfTnC9K0wIKvU/view?usp=sharing
概要は以下の通りです。(2023年3月13日時点での回答になります。)
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本年度の懇談では、「国家試験」「地域枠」「医師の労働環境」「研修医の燃え尽き症候群」「新専門医制度」「医師数/医療体制」の6項目について要請し、意見交換を行いました。
【国家試験】
医師・歯科医師・看護師の国家試験については、試験作成の都合上、追試験は行っておらず、以前から心身の不調を理由とした追試験は行っていないため、新型コロナウイルス感染症についても行わないとの回答がありました。今後新たな感染症などで本人の意思に反して受験できなくなった場合についても、心身の不調を理由にした欠席の対応は引き続き行わないが、災害などが生じた場合の対応については検討していくとの方針が示されました。医学連役員から医師国家試験の CBT 化について質問したところ、議会でも同様の指摘があったため、今後課題を検討していくとの回答がありました。これに対して医学連からは引き続き、学生への情報提供を求めました。
【地域枠】
地域枠制度については、各都道府県と各学生との取り決めと認識しているため、具体的な内容や法的拘束力については明確な意見を差し控えるものの、地域において必要な医師を確保するための医師確保計画の策定や、地域枠には限らないドクターバンク事業や大学からの医師の派遣、都道府県に対して地域枠制度の適正な運用を求めた(令和 3 年 4 月)との回答がありました。また、各都道府県の状況把握の重要性を認識している旨が示され、国としてどのようなことができるかについて検討していきたいとの回答がありました。
【医師の労働環境】
当直を含めた医師の労働環境を改善することについては、働き方改革に関する検討会などで検討されている措置や支援・指導に関する説明がありました。また、2024 年に施行される追加的健康確保措置と勤務間インターバルに関しても説明があり、医学連役員からは、現在 9 時間で設定されているインターバルの延長や、形式的なものにとどまらない面接実施を求めました。
臨床研修医・専攻医の労働環境を守ることについては、追加的健康確保措置により、ある一定程度の労働時間制限ができるとの回答がありました。各医療機関において労働時間短縮に向けた対応を進めているところであるため、医療アクセスを保つためには、国民の適切な受診を啓発していく必要性が明らかになりました。
出産や育児などのライフイベントを通じて、女性医師のみならず全ての医師が働きやすい労働環境を整備することについては、院内保育、病児保育、復職後のキャリアパス、男性の育休取得などの環境整備に加え、医療機関内の意識改革の必要性の認識が示されました。意識の点においては、各医療機関の間で制度の差が生まれるケースもあるため、個別の好事例や制度運用の方法について周知していきたいとの回答がありました。
医師の働き方改革については、若手医師や女性医師、労働組合などに幅広く参加してもらっており、検討会の報告書を受けて制度をまとめてきたことや、今後医療法を改正し、法施行に向けて丁寧に取り組んでいきたいとの回答がありました。学生に対しては、労働法講義の実施を希望する大学に対して講師派遣や講義の企画、資料の配布などに取り組んでおり、令和 4 年度には 10 大学の実施実績があることがわかりました。
【研修医の燃え尽き症候群】
研修医の業務量および勤務時間について評価し、改善を行うことについては、医療の質や安全を確保する上で重要な課題であり、医療や医師の特殊性を考慮して、各医療機関と連携して医師の働き方改革に取り組んでいくとの回答がありました。
研修医の業務に関連する職場環境の調査及び改善指導については、厚労省において勤務環境に関するアンケートを毎年度実施しており、調査の結果を踏まえて引き続き取り組んでいきたいとの回答がありました。また、労働衛生課からは、医師を含めた労働者全般に関するメンタルケアに関しては、働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト「こころの耳」(厚生労働省サイト)を運用しており、職場のメンタルヘルスケアに関する総合的な案内や、メンタルヘルスの不調に対する相談の対応を行っているとの回答がありました。
【新専門医制度】
研修中の各専攻医を対象とした専門研修の満足度や要望を明らかにする調査や、その結果に基づいた提案を各学会へ行い、医師の多様なライフコースを支援する専門研修を実現させることについては、各専門医機構や各学会において対応されることであると考えているとの回答がありました。
地域枠学生が実質的に希望する専門医を取得できなくなる問題や、全診療科でのカリキュラム制の整備については、専門研修では臨床研修までとは異なり、専門医機構など学会のもとで行われているため、厚労省としてどこまでコミットできるかわからないが、地域枠出身の医師が希望する専門医を取得できるかについては、専門医機構での検討の状況を丁寧に見守るとの回答がありました。
【医師数/医療体制】
医師の需要と供給に関する統計の再検討や、医師の絶対数不足を認識した上で将来の医師数に対する見解を提示することについて、需給推定に関しては医師需給分科会で有識者から意見を得て作成したものであり、今後も同様に有識者等からの意見を踏まえて検討するとのことで、長時間労働を前提としておらず、一定の幅を持って設定しているとの回答がありました。また、医師の労働環境改善については学生の意見も得ているとの回答がありました。
今年度の厚労省との懇談は、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、オンラインで行われましたが、医学生の実情を伝え、厚労省と学生側とで意見交換をすることができました。今後も医学連は、全国の医学生の意見を集め、懇談などの形で国や医療団体と協働し、よりよい医学部づくりを目指していきます。