2024年3月14日、厚生労働省との懇談を行いました。
対面形式で、医学連からは6名の役員が参加しました。
医学連では毎年、全国の医学生から集めた意見をもとに厚労省・文科省との懇談を行い、
意見交換を行っています。
詳しい要請内容や回答を知りたい方は、こちらの厚労省交渉報告もぜひご覧ください。
https://docs.google.com/document/d/1p8ajAL3iFMsWzQaxXm74hFSLeu-M73saUIFlY7Xm744/edit?usp=sharing
概要は以下の通りです。(2024年3月14日時点での回答になります。)
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今年は「地域枠」、「医師数/医療体制」、「国家試験について」、「医師の働き方改革について」の
計4項目について要請しました。ここでは、その一部を紹介します。
【地域枠について】
①地域枠制度を地域偏在解消のためだけではなく、地域医療に携わることを目指す医学生を支援するための制度として継続性を持って運用していくこと。また奨学金を返済した際には従事義務が解消されると提言し、奨学金の付かない地域枠学生についても上記目的に沿った支援を行うこと。
「都道府県の医師確保計画に基づいて、設置、運営をしており、各都道府県において学生のキャリア形成にも配慮しつつ運用を行う。」との返答が得られました。また、これを受けて医学連役員からの「奨学金の問題で、奨学金を返還した場合に離脱が認められない、あるいは在学中に奨学金を借りた場合に類似した契約になることについてはどう考えるか。」との質問に対して、「都道府県と学生の間の取り決めであるので、一律に行うものではない。キャリア形成プログラムを通じて支援していく。との返答が得られました。
②地域枠制度の問題点とその解決策について議論を進めるために、各都道府県の地域枠制度の実態を公表することを求めます。
「医師養成課程を通じた、医師の偏在対策の検討会で地域枠医師の配置について回答した。各都道府県の状況についてはその都度検討を行っていく。」との返答が得られました。これを受けて医学連役員からの「地域枠制度の充実度は大学ごとに異なるが、学生の実態について把握し改善してほしい。学生への地域枠制度の取り組みについて教えてほしい」との質問に対して、「一律に学生への取り組みを示すことに関しては現在の課題であり、国会の検討会、地域医療構想などのワーキンググループで都道府県の取り組みの紹介を実施している。」との返答が得られました。他にも医学連役員から、入学後に従事要件が追加されることについてどう考えているか質問したところ、「入学者には丁寧な説明を行っている。学生がやりがいをもって定着できるような取り組みを行っている。都道府県、大学との間で相談しながら進めていくことが自然。」という返答が得られました。
【医師数/医療体制】
①医師の需要と供給に関する統計に関して再検討を行い、医師の絶対数不足を認識した上で議論し、将来の医師数に対する見解を提示すること。また、それに伴って、今後の医学部定員増減の計画について説明すること。
「2010年から2020年の10年間で全国で約29万5千人から約34万人へ約4万5千人増加している。令和11年頃に人口減少によって、医療需要が減少していくと予想されている。」との返答が得られました。
【国家試験について】
①医師国家試験において追試験を導入すること。また、他の医療、医薬品、健康、食品衛生関係の国家試験についても、受験者の要望を聞き取り、適切な対応をすること。
「試験問題作成は約1年間をかけており、改めて本試験の同レベルの追試験を作成することは困難になっている。」との返答が得られました。医学連役員からの不測の事態が発生した時に追試験等の対策が必要だと思うが、どのような準備をしているかという質問に対しては、「追試験等に関しては検討段階。コロナに感染した場合には別室受験を認めている。」との返答が得られました。
②医師国家試験の実施形態において変更が生じる場合は、事前に十分な周知を行うこと。
「平成26年に検討会を実施し、平成27年度末に報告書を出した。国家試験を500問から400問に変更したのは平成30年の試験であり、一定期間を開けて実施している。」との返答が得られました。医学連役員からの周知の際に例題を示すような対応はあるか、という質問に対して「実施形態の変更がどの程度であるかによって変わってくる。CBTのような形式であればすぐ実施できる。」との返答が得られました。
【医師の働き方改革について】
①研鑽の名目で初期および後期研修医が業務の延長をさせられることのないように労働時間の定義をより明確にすること。
「所定の労働時間内に行われる研鑽は当然労働にあたり、上司の指示や目次の指示によって行われるものは労働時間に関しては労働とみなすという通達をしている。労働の定義について明確化し、周知に努めている。研鑽に要した時間に関しては個別の判断に委ねられる。」との返答が得られました。
②医師の働き方に関する議論について、医学生に対して労働環境についての情報提供を積極的に行いつつ、勤務医のみならず医学生の意見も広く収集し、反映させること。
「医師の働き方に関する検討会として、22回議論をしている。引き続き関係者の意見を伺いつつ、取り組みを進めていく。」や「希望される大学に医師や弁護士を派遣し、医師の働き方改革について講義を実施している。これにより、医学生へ周知を行っている。」との返答が得られました。また、4月から医師の働き方改革が施行される中でモデルコアカリキュラムに組み込んで一律に周知を行っていくのかどうか、もしくは、全ての医学生から労働環境について周知できる環境は構築していくのかどうか、という医学連役員の質問に対しては、現在人材を派遣して大学で講義を実施している。令和3年度から講義をされる先生向けに労働についての冊子を作成して、先生方に周知を行っている、という返答が得られました。また、実際に厚生労働省から10大学11回の講師派遣を行っているということが分かりました。
③全ての医師が必要十分な休息をとるために勤務間インターバル制度の適正化を求めます。
これに対し、「日本の医療は医師の研鑽、自己犠牲によって成立してきた背景があるが、労働時間を短縮し、健康確保のために勤務間インターバルの確保をし勤務時間を制限することは重要。心臓疾患の労災認定の基準に関する専門検討会において勤務間インターバルが11時間未満の勤務について様々な因子を評価し、勤務と疾患の発症との関連を調査している。C-1水準に該当する臨床研修医は地域ごとに疲労回復をさせるために9時間の勤務間インターバルを設けている。」との返答が得られました。
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今年度の省庁交渉は数年ぶりに対面で行われ、直接顔を合わせて厚労省と学生側とで意見交換をすることができました。今後も医学連は、全国の医学生の意見を集め、懇談などの形で国や医療団体と協働し、よりよい医学部づくりを目指していきます。