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医学連第36期中央執行委員会は、新型コロナウイルスの感染拡大に伴って、全国から様々な不安の声や意見が寄せられていることを踏まえ、緊急声明を発表しました。今後、関係各機関に対して、要請を行っていきます。

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内容は以下の通りです。

 

緊急声明

~新型コロナウイルスの影響に対して、学生への支援を求めます~

2020年5月2日

全日本医学生自治会連合 第36期中央執行委員会 

 

 新型コロナウイルスの感染拡大は、社会全体に大きな影響を及ぼしています。日本でも緊急事態宣言が発令され、多くの大学で休講や臨時の措置が取られています。こうした中で、全国の医療機関が最前線で対応に当たっている一方で、その将来を担う多くの医学生には、対策や説明が置き去りにされたままで不安が広がっています。一刻も早く感染を収束させるとともに、影響を受けている多くの学生に目を向け、対策を講じることが求められています。

医学連の立場

 医学連は、時々刻々と変化する情勢の中で、感染が収束するまでは①正しく情報発信する、②医学生の要求を的確につかむ、③感染収束の後の状況に対して最大限不利益を軽減できる提案をする、④感染から医学生を守る、また、収束の見通しが立った段階では、⑤社会的な被害の状況を確認してその復興に全力であたる、⑥これまで行ってきた活動を減衰させることなく再開する、の6つのことを基本方針として対応に当たります。

  医学連は、全国の医学生の学生生活を守るため、以下の各項目について、関係各機関に対して対応を求めていきます。

 

【A.経済的状況】

 新型コロナウイルスの影響によって、学生の経済的状況は非常に脅かされています。アルバイトができない、家庭の収入が減るなど、苦境に立たされる学生の声が寄せられています。医学連は、こうした現状を深く憂慮しています。

 医学連は、もとより高い学費は値下げに向かうべき、学生への支援は国が責任をもって行うべきという立場に立ち、これまでも「高等教育無償化プロジェクトFREE」などの活動に協力し、学生の経済的実態について明らかにするとともに、各界に対してその改善を要請してきました。

 高すぎる学費の負担によって学生の学ぶ機会保障・学生生活がギリギリまで追い詰められている現状で、アルバイトがないと成り立たないという学生も多くいます。こうした中で、何の支援もないままでは多くの学生が追い詰められ、退学も余儀なくされる可能性があります。一刻も早く、学生に対する緊急支援を行うべきです。

A1.今年度の授業料の納入について、一時停止・猶予されること。

A2.新修学支援制度による授業料減免・奨学金の対象は、自粛要請による減収の影響を受けた学生も含め、大幅に拡大されること。

A3.特別定額給付金10万円に関しては、様々な事情から受け取れない学生がいることに鑑み、今後、給付を行う際には、個人単位で受け取ることができるようにすること。

A4.学生の生活を支援するため、国の予算措置および大学での支援策によって、全ての学生に対する一律給付金を行うこと。

A5.オンライン授業の設備などにかかる費用に関しては、学生の個人負担としないこと。

A6.新型コロナウイルスの影響によりアルバイトが停止された学生に対して、一般的な水準での休業補償手当を行うこと。

 

【 B.カリキュラム(教育課程)】

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、多くの大学で講義・実習をオンラインで行うなどの代替措置がとられています。この状況がいつまで続くのか不透明な中、通常の講義や臨床実習を再開できるのはいつになるのか、試験も例年通りには行えないのではないか、などの不安があがっています。現状、国・大学からの情報提供は不十分です。

 また、共用試験や国家試験などについても、試験が延期された際にどのように保障されるのか、進級や卒業に悪影響があるのではないか、などの声が医学連に届けられています。例年通りにはいかなくても、柔軟で弾力性があり、学生に過度な負担を強いない仕組みづくりが必要です。

 関係各機関は、こまめに連携をとり、シームレスな制度設計を行っていくとともに、医学生に対する迅速で十分な情報提供を行っていくべきです。

B1.感染拡大の状況を踏まえて、影響が著しい学年には、既定のシラバスを変更することも含めて、柔軟にカリキュラムを再編成すること。

B2.カリキュラムの編成にあたっては、学生の声を聞く機会を設け、最大限取り入れるとともに、代替措置などが十分なものであるか学生からのフィードバックを行うこと。

B3.長期休暇の確保は、学生の課外活動での学びやメンタルケアにも重要なことと捉えられるため、講義や実習を延期する場合は、休暇期間に最大限配慮すること。

B4.オンラインでの学修に移行する機会が増加するため、ネットリテラシーなど学生が安全確保の方法を学ぶ機会を設けること。

 

<講義・試験>

B5.オンライン講義が実施される際には、参加できない学生が出ることがないように、その設備・セキュリティ確保は国および大学が責任をもって設定すること。

B6.低学年で行う予定の基礎実習・研究について、最大限の対策を確保しつつ、柔軟な代替措置を検討していくこと。

B7.この期間に予定していた試験などが延期される場合は、学修内容が担保されつつ、試験日程が過密になりすぎたり必要以上に休暇を短縮されることがないよう、柔軟な代替措置を検討していくこと。

B8.CBT、OSCEなどの共用試験について、臨床実習のための必要な知識・技能を身に付けるという観点から、実施できない場合は十分な代替措置を行うなど柔軟に対応すること。

B9.卒業試験や国家試験について、通常通りに実施できない場合の代替方法については複数の選択肢を早期に示していくこと。

B10.大学入学試験について、高等学校等の修学状況も踏まえながら、受験生の安全確保対策と公平な受験機会の保証を十分に行うこと。

 

<臨床実習>

B11.必要な実習が履行困難になることによって、学生に学業上の不利益があってはならない。

B12.単位認定や卒業要件に関わる実習時間の確保が難しい場合は、代替措置を設けて柔軟に対応すること。

B13.臨床実習に出られない状態が長期化した場合に、医学生が現場に出ない代替措置だけでは臨床能力を十分に獲得できない可能性があるため、その対策を提示すること。

B14.実習についての行い方や対応については、正確でわかりやすい情報発信を行うこと。

B15.臨床実習を継続・再開する場合は、事前に再開基準について明確に示し、新型コロナウイルス感染対策を十分に行ったうえで、学生に対しても安全性確保について説明すること。

B16.実習を行う際は、防護具など学生の感染対策にかかる費用は、自己負担としないこと。

B17.各大学の実施状況、取り組みについて大学間で情報を共有し、それぞれの大学の特徴に合わせて良い点を取り入れていくこと。

 

【C.病院見学・マッチング】

 現在、多くの医学生が基本的に外出禁止になり、予定していた病院見学などに行くことができない状況です。また、実習の延期に伴って夏季休暇が削減される可能性もあり、病院見学に行けなくなることも見込まれます。高学年を中心にこうした現状に対して不安の声が広がっています。医学生、医療関係者が互いに感染しないよう注意しつつ、早急な対応が求められます。

C1.今後、ウイルス感染が収束し病院ごとに見学受け入れの安全性が確保された場合、医学生が必要な病院見学の機会が設けられるよう、柔軟に対応すること。

C2.病院見学の機会が十分に確保できなかった場合でも、マッチングの際に、見学の有無によって医学生に不利益があってはならない。

C3.病院見学に行く機会が設けられない場合も、オンラインを利用するなど、各病院の情報を得られるような代替手段を行うこと。

C4.病院見学・面談を行う際は、参加者のウイルス感染対策を十分に行うこと。

C5.今年度のマッチングに関しては、情報が得にくい現状を踏まえて、マッチングに関わる情報を早期に確認し、公表していくこと。

C6.新型コロナウイルス感染患者の受け入れ病院を含め、全ての病院において研修医が安心して働けるよう、全職員の安全と健康を守ること。また、研修医の指導体制を崩すことがないよう最大限の努力をすること。

 

【D.その他】

 新型コロナウイルス感染拡大に伴って、感染者に対する差別的な言動がなされたり、大学によっては学生の意見を聞かない一方的な運営が行われたりしている中で、必要以上に学生の自由が制限されていることがあります。また、全ての医学生を含む大学関係者は、感染拡大を阻止し、早期に健康的な日常生活を取り戻すために、協働して対策に当たることが求められています。

D1.医学生に対し、新型コロナウイルスに関連した脅し・ハラスメント行為は許されない。また、感染者ならびに医療従事者に対する差別的言動には断固反対する。

D2.人との交流が難しくなり不規則な対応を迫られる状況にあるため、学生のメンタルケアを促進していくこと。

D3.大学の施設の利用が制限されるため、図書館の書籍の利用やPCルームの使用、教科書の購入などに関して、学生が可能な限りアクセスできるよう対策を行うこと。

D4.発表される様々な対策・措置に関して、不適切な自由の制限など学生や現場の声を取り入れない一方的な運営を行わないこと。学生や現場の声を最大限取り入れていくこと。

D5.発表される様々な対策、措置に関しては、迅速に必要な学生へと届くよう、明確な周知を十分に行うこと。

 

 

要請  

医学連は、以上の立場から、関係各機関へそれぞれ要請します。

<国に対して>

【経済的状況】A1~6 の項目に対して、大学ごとの支援策に任せず、国として十分な予算措置を行い、学生が安心して学業を続けられる状況を保証すること。

【 カリキュラム(教育課程)】B1~7の項目に対して、各大学に対策を促すとともに、B8~10、B13の項目に対しては、国が責任をもって基準や対策を示していくこと。また、実習に関してB11,B12,14の項目について各大学・学生に十分周知すること。

【病院見学・マッチング】C1~6の項目に対して、国として各病院・大学に対策を促すこと。特にC5、C6については、国の責任で臨床研修病院に対して十分な支援を行い、方針を示すこと。

【その他】D1~5の項目に対して、国として明確な方針を示し、各大学に周知すること。特に、D4,D5については、現場・学生の声を十分に聴く姿勢を示すこと。

 

<各大学、 医学部長病院長会議、国立大学協会に対して>

【経済的状況】A1~6 の項目に対して、大学として十分な予算措置・学生の支援対策に積極的に取り組み、学生が安心して学業を続けられる状況を保証すること。

【 カリキュラム(教育課程)】B1~7の項目に対して、対策に当たるとともに、B8~10、B13の項目に対しては、国と連携しながら明確に方針を示すこと。また、実習に関してB11~17の項目について各大学で迅速に対応すること。

【病院見学・マッチング】C1、C5の項目に対して、大学として学生に十分な情報提供や見学機会の提供など柔軟な対応を取ること。

 

<臨床研修病院に対して>

【病院見学・マッチング】C1~C6の項目に対して、国、大学など関係機関と連携しつつ、学生のための十分な対策を取ること。

 

<全国の医学生、社会全体に対して>

 すべての項目に対して、自身や大学の状況を的確に把握し、必要な場合は学生の中で意見をまとめ諸機関に届けること。また、特に項目D1について、差別的な言動を煽ることなく、項目D5諸機関からの情報に耳を傾け、正確に把握し、感染拡大防止に努めること。

 学生同士で最大限に助け合い、協力してこの危機を乗り切りましょう。

以上

 

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