2020年12月18日に、全日本医学生自治会連合(医学連)は文部科学省との懇談を行いました。新型コロナウイルスの影響により、オンラインでの実施となりました。医学連では毎年、全国の医学生から集めた意見をもとに文部科学省との懇談を行い、意見交換を行っています。今年度は、要請すべき課題が多いことから、年度内に2回の交渉を行うことも見据えて例年の時期よりも前倒しで行いました。
今回の懇談では、コロナウイルスの影響についてを全面的に取り上げ、医学連の行ったアンケートの結果をもとに要請しました。項目は、「臨床実習」「医学生の県外移動に係る制限・病院見学」「経済的支援」「講義の実施」「共用試験」「医学生が感染した際のケア」「学生のメンタルケア」「学生との対話」の8項目でした。
文部科学省要請文はこちら:【完成版】37mz 文科省 要請要旨
【臨床実習】
臨床実習について医学連からは、対面での実習が実施されていないことや患者さんに会えないなど、著しく実習が損なわれている状況があることから、これらを是正し学生の学びを保障してほしいと伝え、文部科学省の見解を問いました。文部科学省としては、春に「対面実習ができない場合は代替措置を講じること」「単位については弾力的に認めること」を各大学に要請しており、これを踏まえて各大学で対応してもらっているということです。まずは大学と学生が相談した上で、学生の話を聞いてくれないような状況がある場合は文部科学省に相談してほしいということでした。
【医学生の県外移動に係る制限・病院見学】
医学生の県外移動について、医学連からは各大学で制限が大きく異なっている現状があることから、感染状況に合わせた一定の基準が求められていることを説明し、過剰な行動制限をかけないことを求めました。また、就職活動のための県外移動することに関しては実習を休むことができるようにするなど柔軟に対応することを求めました。
これに対して、文部科学省からは、県内外の移動制限に関しては各自治体ごとに感染状況に応じて方針が出されており、それに基づいて各大学が判断するものだと回答がありました。国として一律で何か基準を出すことは難しいということでした。学校が臨時休業をどのような場合に行うか、またその際の学生の学びをどうするかという指針(6月5日)に出しているが、行動制限に関しては明確にしていないとお答えがありました。
また、どうしてもやむを得ない理由で移動する場合もあることに留意し、待機している間の学習のフォロー方法については各大学で対応する必要があるという認識を示しました。
【経済的支援】
経済的支援について、医学連からは、学生の生活を支援するための追加の支援策、アルバイト禁止に対しての十分な補償、授業料納入猶予などを求めました。
文部科学省としては、今年度4月から始まっている修学支援制度に加えて、コロナで家計が急変した学生にも対応ができるように柔軟な制度を行っていると説明があり、18日当日にも改めて全国の大学に通知を送り、学生一人ひとりについてきめ細かな配慮をしてもらえるように要請したということでした。緊急支援金については、書類が集まっていなくても学生の状況が苦しければ柔軟にやってもらうよう対応しており、学校が給付すべきと判断した学生には全員給付をしているという回答がありました。また、現在98%の大学で後期授業料の納付猶予を行っており、今後も情報を集めながら追加で何を行えるか考えていきたいとお答えがありました。
アルバイトに関しては、学生に対してアルバイト制限をするのであれば、その代わりに奨学金のメニューを紹介するなど各大学で学生にきちんと伝えるようにお願いしているということでした。
【学生との対話】
コロナ禍の中では各大学で講義の行い方やカリキュラムが変わっていること、様々な行動制限を行うという状況にあります。医学連としては、様々な対策をするうえで、学生もその作成に参画し、大学運営に学生の声を取り入れていくことを求めました。
これについて、文部科学省からは、大学の中では新入生への面談を行ったりアンケートを行っている大学も多いという認識を持っており、不安な学生などに対して電話などを使って相談してもらうよう各大学に伝えているという回答がありました。
当日は、限られた時間内で全ての項目に回答して頂くことができなかったことから、オンラインでの交渉でお話したのは上記4項目に絞り、残りの4項目については、後日文書での回答をいただきました。(全文は回答書参照)
【講義の実施】
コロナ禍の中で、対面講義からオンライン授業や代替措置などが行われることが多くなっています。医学連からは、こうした様々な講義方式について、より良く学習するためにアンケートなどを実施して声を反映していくこと、資料配布のみの講義は妥当性を十分検討するように要請しました。また、学生と教員や学生同士が対面の授業を通して十分にコミュニケーションが取れるような機会を保障していくことを求めました。
これについて、文部科学省は、学生の理解や納得を得ながら学習機会を確保することが重要とし、各大学への通達(12月23日)において感染対策を十分に講じた上での対面授業の実施を検討することや、学内施設の利用制限にはその必要性や合理性を十分説明すること、遠隔授業は対面授業に相当する教育効果を必要とするなどの依頼を行っていると回答しました。
【共用試験】
共用試験については、医学連からは、全国の医学生が必要な知識・技能を身につけられるよう、実施できる方法について各大学に対し文科省が示すこと、学生に対して丁寧に説明することを求めました。
これについて、文部科学省からは、実施主体である医療系大学間共用試験実施評価機構から各大学医学部に実施に係る考え方や対策が通知されており、試験実施内容等は機構との協議・派遣監督を通じて実施されていると回答しました。また、学生に対する丁寧な説明は必要だとし、不安や懸念がある場合は、まずは各大学担当者に伝えてほしいと回答しました。
【医学生が感染した際のケア】
医学連からは、医学生が新型コロナウイルスに感染した場合に、過度なバッシングを受けている状況、不安を抱く学生が多いことから、学生を守るシステムを整備するよう求めました。
これについて、文部科学省は、現時点での科学的知見に基づいて向き合う必要があるとしたうえで、誰もが感染する可能性があり、感染者や学校の対応を責めるのではなくさらなる感染を防ぐことが大切だとしました。また、2020年8月に文部科学大臣から、感染者への差別や偏見、誹謗中傷等を許さないというメッセージを公表し、今後も学校における感染症対策と教育活動の両立に理解と協力をお願いしていくと回答しました。
【学生のメンタルケア】
医学連のアンケートにおいて、半数以上の学生が精神状況について悪化したと回答したことから、交流の機会や学びの支援などを行うことで様々な要因を取り除き、学生の不安や要望を汲み取る・実現するという認識で積極的にメンタルケアを促進していくことを求めました。
これについて、文部科学省からは、コロナ禍の影響では学生が様々な不安を抱えやすい状況にあるという認識を示し、各大学におけるメンタルケアの取り組み状況を調査して、①より学生から相談しやすい体制の構築、②新入生をはじめ学生生活に悩みや不安を抱えた学生の把握、③カウンセラーや医師等の専門家との連携、という対応をお願いしていると回答しました。また、大学関係者の会議などで好事例の周知、学生支援機構のセミナーなどでの情報提供を行っており、文部科学省として各大学の取り組み充実化を促していくと回答しました。