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医学連の第38期中央執行委員会は、2月18日、島根大学医学部と島根県健康福祉部医療政策課に「島根大学医学部地域枠に関する公開質問状」を提出しました。

詳しくはこちら

 

島根県および島根大学からの回答は、3月11日に受け取りました。県と大学が協議の上、一つの回答書を作成していただきました。本ホームページをご覧の皆様におかれましては、地域住民の健康と医療従事者の福祉が共に実現する持続可能な医療体制や、それを支える医学部入試・医学教育のあり方について活発にご議論いただきますよう、よろしくお願いいたします。

質問内容と回答は以下からpdfファイルをダウンロードしてご覧いただけます:質問状(大学宛)質問状(県宛)回答書

 

第39回 定期全国大会 開催報告

2022年3月18日から20日の3日間に、オンラインにて第39回定期全国大会を開催しました。今年は全国から22大学73名の学生が参加し、このうち代議員は25名、役員は13名に加えて委任状6名となっています。

この大会は、医学連の活動を総括し、来期の方針を決定する場です。中央執行委員により決議案が提起され、全国の加盟自治会から派遣された代議員の承認を得ることで決議が可決され、その方針に沿って医学連は活動していきます。また全国から学生が集まり、自治をテーマに交流する機会にもなっています。

第39回定期医学連大会の主な内容は以下の通りです。

 

・中央執行委員会報告①「決議案1章:自治とは、医学連とは」

・講演会(武田裕子先生)

 ・中央執行委員会報告②「決議案2章:省庁交渉、アンケート、地域枠、学費問題、64信州医ゼミ」

 ・特別決議案についての中執報告

 ・自治会取り組み紹介(岐阜大学、滋賀医科大学)

 ・労働環境シンポジウム企画(市橋耕太弁護士、前島拓矢先生)

・自治会取り組み紹介(岡山大学、国際医療福祉大学、島根大学、宮崎大学)

・中央執行委員会報告③「決議案3章:各地の自治会取り組み、新歓、自治会交流集会、岡山加盟運動、自治会再建」

・自治会取り組み紹介(高知大学、山梨大学)

 ・中央執行委員会報告、自治会取り組み紹介、講演をうけてのディスカッション

 ・全体討論

 ・諸議決採択承認

 ・第39期の医学連中央執行委員の役員選挙

 

【中央執行委員会報告】

中央執行委員会報告は多岐にわたる内容となっていました。

中央執行委員会報告①では自治とはなにか、そして自治と医学連の関わりやその意義についての報告がありました。

中央執行委員会報告②では昨年医学連で実施した地域枠アンケートの結果について、地域枠の問題点についての報告がありました。またそれらもとに行った、省庁交渉の様子が取り上げられていました。最後に64信州医ゼミの振り返りがありました。

中央執行委員会報告③では、各地の自治会の取り組みが紹介され、医学連加盟や自治会建設、再建に向けて動き出している大学についての報告がありました。今大会で医学連に加盟した岡山大学の加盟までの経緯や、加盟の意義について報告がありました。

特別決議案についての中執報告では、「ロシア政府によるウクライナ侵攻に抗議し、命の尊厳が守られる国際社会を求める声明」についての報告がありました。戦争は命と健康を脅かすもので、人々の健康を守ることを志し勉学や学習に励んでいる医学生が声明を出す意義が語られました。

 

【岡山大学加盟】

今大会の大きな企画として岡山大学の加盟がありました。医学連として新たに加盟を迎えるのは2年ぶりとなります。岡山大学は、これまで、医学連加盟のために精力的に活動を行ってきました。昨年7月に行われた、岡山大学の総会では全学生の半数を超える賛成により医学連への加盟が承認され、岡山大学で自治会活動が盛り上がっています。岡山大学の学生からは、これまで行ってきた取り組みや、大学への働きかけ、その結果実現したことの紹介、そして今後の意気込みや目標について報告がありました。岡山大学の加盟について「現在医学連加盟に向けて活動している大学や、自治を始めようとしている学生にとって、モチベーションに繋がる」といった意見が寄せられました。

 

【自治会取り組み紹介】

自治会取り組み紹介では、岐阜大学、滋賀医科大学、岡山大学、国際医療福祉大学、島根大学、宮崎大学、近畿大学、宮崎大学、高知大学、山梨大学から発表がありました。各大学の取り組みは様々で、コロナ禍での学生の要求実現のために活動し成果を上げていることが報告されました。その後行われたディスカッションでも各地の取り組みを紹介しあったり、励ましあったりと、盛り上がっている様子が感じられました。「自治会取り組み紹介を通して、自身の大学に案を持って帰ることができとてもためになった」といった感想が寄せられました。

 

【講演】

大会2日目は、順天堂大学大学院医学研究科医学教育学・教授である武田裕子先生により、「日本に住む困窮した人々」と題し講演をしていただきました。

事前学習として、学生が日本に住む困窮した人々について調べ、平和、収入、社会的公正と公平性の点から発表しました。先生からは、病院の入り口に立てない人がいて、健康格差は健康の社会的決定要因(SDH)の視点から見ることができることや、医療者は患者さんのヘルスケア・アドボケイトができることを学びました。「医療を必要とする人は病院に来られるとは限らない、またその理由は様々であることを学んだので、視野を広くもち、病気の治療後も見据えられる医師になりたい」といった感想が寄せられました。

 

【労働環境シンポジウム企画】

今大会の大きな企画として、労働環境シンポジウムを行いました。労働問題に詳しい弁護士である市橋耕太先生より、医師の長時間労働について法律面から講演していただきました。現場で働く若手医師の前島拓矢先生より働く医師の現状について講演していただきました。長時間労働、無給医、地域枠などの医師の労働環境について、制度や法律の観点から発表されました。ディスカッションでは、医師の労働問題が当事者や医療にどのような影響をもたらすかをいろいろな視点から話し合う様子が多くみられました。

 

【全体討論】

今大会では全体討論を特別決議案についてと全体についての2回に分けて行われました。全体討論では、大会に参加していた多くの学生が自由に意見を述べる場が与えられていました。様々な学生の意見が聞かれましたので、その一部をここにご紹介いたします。

 

特別決議案に関する全体討論

・医療者がなぜ戦争に反対するかについて

・平和的手段での解決を求める点で、ロシアが武力で不正に侵攻してきたこと、侵攻してきた相手に対して防衛的な手段で武力を使うことの書き方について

・ロシアにルーツを持つ人に対しての偏見や、ロシアにも戦争に反対している人がいる点について

 

全体決議案に関する全体討論

・決議案の地域枠部分に対しての意見集約用紙の内容について

・岡山大学が医学連に加盟するに対しての思いや、決意

・岡山大学の加盟が、岡山大学、医学連、他大学の発展につながること

・自身の大学でも自治会を作ろうとしているが、他大学での自治会取り組み紹介を聞いて励まされたということ

・初めて医学連大会に参加して、いろんな大学の自治の仕組みを知り、意見を交換でき、新しい発見があったこと

 

【諸議決採択・第38期の医学連中央執行委員の役員選挙】

大会3日目には、決議案・決算予算案などの諸決議が採択され、第39期の中央執行委員会が選出されました。昨年度、役員の輩出がなかった大学から次期中央執行委員が選出され、これまで以上に全国幅広く、各地の自治会とつながることが期待できます。最後に、新中央執行委員長から閉会の挨拶を述べて本大会は終了しました。

 

3日間にわたる活動報告や討論を通してこの大会に参加した全員が多くの学びを得たと思います。今大会で得たことを活かして、全国の学生自治会を発展させられるよう活動していきましょう。

 

大会の集合写真

 

厚労省交渉を行いました

2022年3月3日に、全日本医学生自治会連合(医学連)は厚生労働省と懇談を行いました。

新型コロナウイルスの影響により、昨年度同様オンラインでの実施となりました。医学連は毎年、全国の医学生から集めた意見をもとに厚労省と懇談を行い、意見交換を行なっています。今年は「国家試験」、「医師の労働環境」、「研修医の燃え尽き症候群」、「新専門医制度」、「医師数・医療体制」、「予算」の計6項目について要請をしました。要請文はこちら

以下に、その内容と回答についてを簡潔にまとめ、報告します。

 

【医師国家試験について】

①第116回医師国家試験において問われた「生活保護受給者は原則として後発医薬品」という方針について、厚生労働省がこの方針を採る理由、および、本問における作成意図を示すこと、また、来年度以降の医師国家試験に向けて勉強する医学生に差別的な印象を与えないよう、生活保護受給者に配慮した貴省の見解をつけて、回答を公表することを要請しました。

 これについて厚労省は、方針は平成30年の法改正が根拠であり、国民全体として後発医薬品の使用率を上げる意図があると回答しました。作成意図に関しては機密性を保持するために回答できないと伝えられました。

 

②医師国家試験において追試験を導入することを求めました。

 厚労省は、医療関係職種の国家試験は問題作成に時間がかかり、問題を追加作成することが困難であるため追試験は実施していない。従来から健康を理由とした追試験の実施はしていないため、新型コロナウイルス感染症に対する対応も同じであると回答しました。

 

③医師国家試験のコンピュータ制の導入に関して学生に情報を共有することを要請しました。

 医師国家試験のCBT化は現在研究班と議論をしているが、検討段階であるため、導入されるのであれば十分事前に告知、周知されるとの見解でした。導入の具体的年度についてもまだ決まっていないと回答をいただきました。

 

【医師の労働環境について】

①無給医の実態を早急に把握し、働き方改革に伴う法整備をもって根絶を目指すこと。

②医師の働き方に関する議論について、医学生や勤務医の意見を積極的に収集し、反映させること。

③福利厚生の充実と適切な労働管理をもって、女性医師のみならず全ての医師が働きやすい労働環境を整備していくこと。

④臨床医だけでない多様な働き方を前提とし、医師確保のための法整備を行っていくこと。

 この4点について要請を行いました。

 厚労省によると、無給医問題は、労働に見合った対価が支払われるように文科省から指導が行われているため改善の方向に進んでいること、また、問題改善のための予算確保に国が取り組んでいるそうです。また、若手を代表する医師3人ずつに、働き方改革の会議に参加してもらい、状況の改善に取り組んでいると回答をいただきました。

 

【研修医の燃え尽き症候群について】

2024年度より施行される医師の時間外労働上限規制について、臨床研修病院への再度周知および達成度の評価を徹底し、違反については適切に対応をすること、また、研修医への追加的健康確保措置その他の徹底を図ること、研修医の職場環境の調査および改善指導を行うことを要請しました。

 これについて厚労省は、働き方改革における健康確保措置や労働上限の制定などに取り組んでおり、当直に関するルールなどを現在検討中であると回答しました。

 

【新専門医制度に関して】

①各専攻医が抱く循環型プログラムの問題点や満足度などに対してフィードバック調査を実施し、それに対して真摯に対応すること。
②専攻医や学会からの機構に対する問い合わせに関して、綿密に対応するよう日本専門医機構に求めること。
③各都道府県・各領域においてカリキュラム制導入の徹底と、結婚・出産・育児・介護など多様なライフコースに柔軟に対応できる制度運営を機構に求めること。
④各都道府県においてプログラムの質と勤務地の検証を丁寧に行い、専攻医が希望する形でのプログラムを策定するよう機構に求めること。
⑤地域枠学生が実質的に希望する専門医を取得できなくなる事態を回避するため、各都道府県に研修基幹施設を複数設置する、適宜カリキュラム制を取り入れるなど柔軟な対応を行うこと。
⑥専門医制度の運用について、医学生および専攻医がアクセスしやすい形での正しい情報の提供を行っていくこと。

 これら6点について要請しました。

①②④⑥は日本専門医機構の管轄であることから回答は控えられました。

子育て支援については、法改正によって育児休暇が取りやすくなった。専門医についても十分利用できるよう検討したいとの回答が得られました。また、カリキュラム制の導入については専門医機構に要請したいとの意見でした。今後、医学連としては、専門医機構への要請も含めて内容をより検討していきます。

 

【医師数・医療体制について】

①医師の需要と供給に関する統計に関して再検討を行い、医師の絶対数不足を認識した上で議論し、将来の医師数に対する見解を提示することを要請しました。

これについて厚労省は、令和2年に最新の需給推計を出しており、今後も偏在などを考えながら推計を行なっていくと回答しました。医師の偏在については6年前から検討会を行なっており、対策として専門研修におけるシーリングなどを行なっているが、効果が出るまでに時間がかかるため今後も検討していきたいと回答しました。

② ①に伴って、今後の医学部定員増減の計画について説明することを要請しました。

令和5年の医学部定員は決まっているが、令和6年以降は第8次医療計画の中で議論をしている。歯学部振替枠は廃止し、地域枠自体は増やしていくとの回答が得られました。

 

【予算について】

各研修病院が十分な質と量を保ち、研修医および専攻医の望む研修を行えるよう、予算を確保することを要請しました。

 厚労省の回答としては現在予算規模として110億円の予算を確保しているとの回答が得られました。

 

厚労省交渉の様子

地域枠問題に関する要請等についての厚労省懇談

2022年2月25日に全日本医学生自治会連合(医学連)は全国医師ユニオンの代表の植山直人先生や日本労働弁護団の市橋耕太先生ともに厚生労働省(厚労省)と地域枠に関しての懇談を行いました。懇談の進行に沿って、報告します。

 

1. 要請書等(令和3年11月19日交付。一部改訂あり)の趣旨説明

「医学生の地域枠制度の問題に関する要請」では、地域枠制度は相対的に医師が不足し地域医療の継続が困難な地域の医師不足を解消するために始まった制度であるが、本来は絶対的医師不足の解消を優先すべきである、と述べられています。現行の地域枠制度は地域枠学生の不利益や人権侵害を引き起こしているなど、地域枠制度の問題点を挙げ、医師・医学生の人権を守れるような制度とすることや養成する医師の増員などを厚労省に求める要請文となっています。

各団体の発表した意見書

・医学連:医学部地域枠における課題を提起し、より柔軟な制度設計を求める意見書

・日本労働弁護団:医師の「地域枠」制度の改善を求める意見書

・全国医師ユニオン:地域枠制度問題に関する要請文

 

2. 上記に関する厚労省のご見解の説明及び質疑 

〈厚労省の見解〉

・地域枠制度の運営をしていく中でも、「義務が強すぎる」「柔軟にしすぎると離脱が増える」「地域枠以外で入学できた学生の機会を奪っている」など、様々な意見が寄せられ、バランスが難しい。

・ポイントの1つ目として、契約形態が多岐にわたっているので、地域枠が何を指すかが曖昧になっていることがある。そこで昨年4月に、地元出身者枠・大学独自の枠・地域枠の3つに沿って運用してもらうよう都道府県に通達した。

・もう一つのポイントは、地域枠の学生に、従事要件や離脱要件を事前に説明をして同意を得た上で、入学してもらうことである。これまでは説明を都道府県に任せてきたが、一定の枠組みをつくった。

・「不同意離脱の場合、専門研修を認めない」という規定が議論の的になっているが、背景として、都道府県から、同意のない離脱者は研修させないでほしいという意見があった。

・離脱に関しては、都道府県ごとに契約は多岐にわたるため、画一的な見解を示すのは難しい。

・都道府県の役割、専門医機構の判断は整理が必要であろうと考えている。今後の議論を見守ってほしい。

 

〈質疑応答〉

・離脱はどの程度許容されるのか?

→(厚労省)結婚や介護、キャリアなど様々な要因があり、離脱をゼロにするのは難しいが、一般の入試とは別枠なので入学時優先されており、定着してもらう必要がある。本人のキャリアと両立するにはどうしたらいいか、本人の希望に沿う形で考えるためのキャリア形成プログラムを進めていきたい。9年間通して従事するのではなく、一時中断するというケースもあって良いと思う。

 

・世界各国で医療過疎地域の問題はあるようだが、日本の地域枠制度は強制力が高い。オーストラリアの地域枠制度は、義務期間が3年で定着率も高い。また、若手よりも一定期間たった医師の方が地方に行きやすいのではないか。

→(厚労省)欧米と日本で医療制度かなりちがうので比較できるのか疑問があるが、ミドルキャリアも入れることは検討の余地があると思う。現在、偏在対策は若い医師が中心となっている。それ以降の医師については、ライフイベントで動けない、医師の数としても多いなどの原因で対応が難しいものの、指導医クラス以上の医師に来てほしいというニーズもあると思う。

 

・山梨県の違約金に関して懸念や、さすがにやりすぎではないかという議論はないのか?

→(厚労省)報道を見て驚いたというのが正直なところ。違約金は地域枠とは独立したキャリア形成プログラムでの設定にはなるが、プログラム運用において違約金までは想定していなかった。言及は難しいが、地域枠以外でプログラムを希望する学生や自治医の出身者などを対象にするなど、契約においてそれぞれ決められることかと思う。

→(質問者)山梨県でもキャリア形成プログラムを結ばないことは考えられておらず、事実上地域枠と一体であり、別物とは言い難い。厚労省として問題意識を持っているなら始動して働きかけてもらえたらと思う。

 

3. 日本専門医機構の不同意離脱への対応についての質問

①都道府県の同意/不同意が専門医資格の認定/不認定を決することになる(医師の権利を制約する)ため、かかる制度には法律上の根拠が必要ですが、当該法律上の根拠(元となる法律及びその委任を受けた省令等)をご説明ください。その際、都道府県の不同意が、医師の職業選択の自由及び居住移転の自由(憲法22条1項)を制約するものであることにご留意の上、ご説明ください。

②都道府県が不同意とすることは処分性を有する(行政手続法2条4号の不利益処分に該当する)と考えられ、その場合には行政手続法が求める基準を定めたり、同法の手続を遵守する必要があります。また、仮に不利益処分には該当しないとしても、いずれにしても同意/不同意の基準や、都道府県の具体的な手続が定められておく必要があると思われますが、これらは用意されているのでしょうか。

・①②について、既に制度の運用が始まってきていて、問題が出てきている。

→(厚労省)専門医不認定となることは、不利益処分に該当する可能性もある。専門医は医師として必須ではないので、制約にはあたらないという意見もあるが、9割ほどの医師が専門医資格を取る。微妙なところなので、改めてきちんと整理するべきだと思う。一番重要なのは、あらかじめ離脱条件に同意したうえで契約してもらうことで、処分性があるとはいえ、納得したうえで契約してもらうことが前提である。

→(質問者)これから入学する人には説明すると思うが、今の医師に対しては?

→(厚労省)改めて整理する中でこのような話が出てくる。後出しじゃんけんだという意見ももっともである

 

3 同意/不同意の基準や手続きに関して

上記2でお尋ねした同意/不同意の基準にもよりますが、例えば、地域枠で医学部に入学した医師が、学生時に貸与された奨学金を利息を含めて全額返済した上で都道府県に対して離脱を求めた場合(日本専門医機構との関係で都道府県に対して離脱に同意することを求めた場合)、当該都道府県は離脱に同意しなければならないといえるでしょうか。

そのほか、(少なくとも日本専門医機構との関係で)都道府県が同意/不同意を決定する際の考慮要素となる事情や決定基準があれば具体的にご教示ください。

→(厚労省)従事要件と離脱要件は、奨学金とは別に契約する形で、別枠で入試をしているのがポイントである。一般枠とは別なので、特別に入学したという使命で入ってきている。専門医認定については、離脱要件の設定の仕方で別の問題である。

→(質問者)一般的な契約の在り方としては、離脱するなら奨学金返還というイメージだったが、お金の問題でないのなら、単純な身体拘束ではないか。少なくとも今の学生や医師は奨学金返還以外で離脱できない理由がつけ加わること予見していなかっただろう。具体的な相談が寄せられている。

→(厚労省)都道府県との調整が上手くいかないところがあると聞いている。医師の年収を考えると、奨学金を返還すれば離脱してよいと捉えられても困る。不利益処分になってしまう場合も仕方ない。限定的であるべきとは思うが、どの範囲で行うかということを丁寧に議論する。

・雇用契約は5年までという労働基準法もあり、義務年限について問題になると思うが、どのような考えをお持ちか。

→(厚労省)これがそもそも労働契約なのかという根本の問題がある。年数に関しては自治医や産業医などを踏襲する形で当初から9年となっていた。短縮すべきという議論もあるが、地元出身者枠など柔軟に扱いやすいところで対応できるのではないか。

→(質問者)長期間・卒後すぐではなく、オーストラリアのような形にすることが人権侵害にならないやり方なのでは。

→(厚労省)地域枠の中にもグラデーションがある。

→(質問者)病院と医師との契約は労働契約である。労働契約でないのは県との従事要件なのではないか。しかし地域枠という制度を見たときに、県、病院を一体として使用者的な立場と見ざるを得ない。

→(厚労省)勤務する病院を細かく指定している場合はそうなる。

 

・県や病院に人事権が握られているので、ハラスメントの問題もある。我々も地域医療のため、偏在解消のための制度が必要ということは一致している。いきなり地域枠をなくしてしまえとは言わないが、当事者の声を聞いてほしい。

 

→(厚労省)ハラスメントの問題や、地域枠と一般枠での教育の混乱、診療科の指定がある場合は本人の学習行動や実習での指導医との関係性で困難が生じるケースもある。将来を見据えることが大事である一方で、学生にそこまで想像力が及ぶかというとわからない。ハラスメントはあってはならない。個人の人生選択と、地域枠の両立が良いバランスでできるように政策を磨いていきたい。

 

懇談の様子

文科省交渉を行いました

全日本医学生自治会連合(医学連)は、2022年3月4日に文部科学省交渉を行いました。医学連では毎年、全国の医学生から集めた意見をもとに文部科学省と意見交換をしていますが、今年は新型コロナウイルス感染拡大を受けて、オンラインでの実施となりました。今年は以下の7項目について要請をしました。要請文はこちら

1. 新型コロナウイルスの流行状況に関する要請

2.学生生活や授業に関わることを大学と学生が双方向に議論できる場の確保について

3.医学教育について

4.基礎研究の推進について

5.医学部生の燃え尽き症候群について

6.医学生の精神的サポートについて

7.予算について

ここから、各項目の内容と回答について簡潔にまとめ、報告します。

 

【1. 新型コロナウイルスの流行状況に関する要請】

以下の項目を要請しました。

①現在、新型コロナウイルスに対する感染防止対策が診療科や担当医ごとに異なり、臨床実習の機会が著しく実習が損なわれている状況を見直し、必要な代替措置を設けるなどして学生の学びを保障すること。

→これに対し文科省は、令和3年の5月付ですでに対応しており、各大学に実情を踏まえた実習の保障をするようにお願いし、感染対策に関する設備支援などもしているとの回答でした。

 

②対面講義に代わる講義方式を学生にとってより学修しやすいものとするため、アンケートなどを実施し学生の声を反映させるよう各大学に強く推奨すること。また、対面講義に代わる講義の出席要件について講座・診療科間で差が生じないよう、各大学に呼びかけること。

→文科省の回答としては、対応の合理性等を学生に説明し、不安や疑問を抱いている学生に対応するように伝達をしているというものでした

 

 

【2.学生生活や授業に関わることを大学と学生が双方向に議論できる場の確保について】

以下の項目を要請しました。

①大学の方針が学生の意見をより反映される形で決定されること。

②新型コロナウイルス蔓延下において医学生のストレスを軽減できるようなサポートを行うこと。

③医学生同士がコミュニケーションを行うことができる環境を作ること。

④学習環境について、自宅以外で学習できる環境を確保すること。また、十分な間隔をとって学習できるよう、利用可能な学習場所を増やすこと。

⑤医学生がより帰省しやすくなるように学習形態の工夫をすること。

⑥学生の経済的支援について、より充実した支援や受給の適応範囲の拡大を行うこと。また、経済的支援の存在について医学生に周知すること。

→これらの項目に対して文科省は、各大学にすでに通達できていると考えている、との回答でした。⑤の帰省に関する項目については、マッチングや臨床実習、大学のルールがかみ合わなくて困っているが、現状に問題があるとは認識していないと述べています。

 

 

【3.医学教育について】

以下の項目を要請しました。

①国際認証に伴う医学教育改革において、医学生が主体的に関われる仕組みと、医学生の声がきちんと 反映される仕組み作りをすること。また、形だけで機能していないカリキュラム委員会に関して運営を改善し、積極的な学生参加を促すこと。

→①の項目に対し文科省は、各大学に学生が参画した上でのカリキュラムに関するPDCAサイクルが回せているか確認していきたいと回答しています。

 

②カリキュラムの過密化に対する教員と学生双方の負担を実地把握し、より良いカリキュラムを全医学部に提示すること。カリキュラムの大学間格差をなくすこと。

→これに対して、現状カリキュラムは、統一の医学教育モデルコアカリキュラムで3分の2、各大学で残りの3分の1を決めるということになっており、均一的なカリキュラムは難しい、との回答でした。

 

③診療英会話能力や英語プレゼン、英語文献の抄読力等の向上を目指し、医学部において臨床・研究共にグローバルスタンダードに即した教育体制の確立を進めること。

→③に関しては、言語や国際的な患者さんの理解など含め、国際医療に貢献という内容をモデルコアカリキュラムに盛り込んでおり、さらに検討を進めるという回答が得られました。

 

④医学生の留学に関わる国からの金銭面・制度面での援助を拡張させていくこと。各大学において、留学を希望する学生に対して留学に対する支援を充実させること。

→この項目については、コロナ禍での隔離措置が原則7日間の待機から3日間に緩和されたところで自宅での待機も可能なので、経済的にも負担が減ったという考えを示しました。

 

⑤各大学の留年者数を調査し、その実態を明らかにすること。適正な進級判定が行われているか精査すること。

→留年の問題については、大学の6年間で卒業した卒業者数は毎年調べて公表している、との回答でした。

 

⑥全ての大学医学部で公正に試験結果の評価をすること。

→これに対しては、進級判定は不公平にならないように公表されているはずであると回答しています。

 

⑦拡大しつつある医学生の医行為に見合うだけの指導医体制を整備すること。

→指導医体制の整備については、大学設置基準で定められた教員数よりも多く設置されているので十分だと認識しているが、診療参加型の臨床実習については教員数が必要なので、各大学に増員をお願いしている、と回答しました。

 

⑧働き方改革に必要な、労働者の権利や法律に関する知識を医学教育に盛り込むこと。新専門医制度の運用について、医学生および専攻医がアクセスしやすい形での正しい情報の提供を行っていくこと。

⑨卒後教育も担当する厚生労働省とより緊密な連携をとり、医学教育の充実に取り組むこと。

→厚労省との連携に関しては、臨床研修の理念やキャリア性プログラムについてともに議論をしており、よりシームレスな連携を目指して、今後も動いていく、という考えを述べました。

 

 

【4.基礎研究の推進について】

以下の項目を要請しました。

①科学研究費助成事業を継続的に増額させていくこと。

②基礎研究医を養成するためのプログラムを推進すること。また、留学や大学院進学などにかかる費用への支援を充実させること

③基礎研究医として雇用された後も、研究医としての安定的な身分を保障すること。また、ライフイベントに伴う休職・離職に柔軟に対応し、復職時のポストを保障するなど、研究医の待遇改善に努めること。

→これらの項目に関しては、助成費は前年度と同じくらいの金額を計上しており、待遇についても、若手職員の起用などを行っていると回答しています

 

【5.医学部生の燃え尽き症候群について】

以下の項目を要請しました。

①入学後も医学生のモチベーションにつながる学びの機会を提供すること。

②患者から感謝される体験、患者から必要とされている事を実感する体験などを早期から積むことがで きる機会を提供すること。

③燃え尽き症候群を発症してしまった学生へのケアを促進させること。

→①②については、モデルコアカリキュラムをより工夫し、医行為についてもより多くの機会が得られるようにと各大学に伝えていると回答しました。

 

 

【6.医学生の精神的サポートについて】

以下の項目を要請しました。

①個人情報の守秘義務を遵守したカウンセリング体制を実現すること。

→これに対しては、メンタルヘルスケアは大切であり、各大学には学生の要求を反映したサポートを何度も要求している、相談窓口は多くの大学に設置してあるが、調査で実際には利用されていないことがわかったので、現状の分析と改善を行っているところであり、学生に周知するように求めたいという回答が得られました。

 

②大学においてストレスコーピングに関する講義を充実させること。

→文科省からは、ストレスコーピングについての事例があまりないが、学生の悩みに対応できるように求めていきたいという回答が得られました。

 

 

【7.予算について】

以下の項目を要請しました。

①質の高い医学教育や無給医の根絶のために、国立大学運営費交付金を拡充させること。

→これに対しては、平成27年度以降は増額しており、令和4年度は前年度と同じ14億円前後を増額した、今後も継続的に対応していきたい、との回答が得られました。

 

②学習施設や食堂、教員数など学習や生活環境向上のために必要な経費を確保すること。

→この項目に対しては、国立大学については5か年計画がある中で、大学の要望を取り入れて対応している、私立大学については、補助金で質の向上に取り組むなどの対応を行なっていると回答しました。

 

③6年間の授業料や共用試験の受験料など、医学生の大きな経済的負担を軽減するように十分な予算と給付型奨学金を確保すること。

→これに対し文科省からは、令和2年度から真に補助が必要な低所得世帯に対して、授業料減免と奨学金給付を行なっている。過年度生については進学者の多くをカバーできる高卒2年以内(20歳以下)としているが、調整の上制限の緩和に努める。予算は希望者全員を対象とできるように予算を確保するため努力をしている、という回答が得られました。

 

文科省交渉の様子

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